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「石見銀山 旅するひと皿2022」イベントレポート

昨年10/29、30の2日間にわたり、世界遺産・石見銀山のまち大森町に有名料理人が集結するグルメイベント「旅するひと皿2022」が終了しました。
全国各地からたくさんの方にお越しいただけた、あの素晴らしい2日間を振り返りました。


MOVIE

大森町在住のフォトグラファー渡邉英守さんが、イベントの様子を素敵なムービーにまとめてくれました。


REPORT

大森町在住の編集者・小松﨑拓郎さんがイベントレポートを寄稿くださいましたので紹介します。


石見銀山のグルメイベント「旅するひと皿」で一流の料理を食べ歩き。
穏やかで楽しい週末を過ごせました。

島根県大田市大森町──
世界遺産・石見銀山の町並みで、全国各地の料理人たちがコラボメニューをふるまったグルメイベント「旅するひと皿」。
2022年10月29日から2日間にわたった同イベントで、島根県内外からの来場者は4,000-5,000人に達した。
石見銀山で暮らす筆者としても、島根の食はなんでもおいしいけれど、ときにはふだんは食べられない料理を味わいたくなるもの。
普段はなかなか入ることができない古きよき趣の残る古民家で料理を味わい、週末を楽しんできました。

旅するひと皿オリジナルデザインのフライヤーは大森町のデザイン事務所6Bが制作

旅するひと皿限定の料理を味わう。

金森家

金森家ではミシュラン二つ星の「天風良 にい留」新留修司さん、東京のすし「㐂邑」木村康司さん、島根のフレンチレストラン「Le Restaurant Hara au naturelle」原博和さん、地酒専門店「坂戸屋」武笠陽一さんによる豪華コラボメニューを提供。
ナスの天ぷら海苔舎利に豚足ソース、大田市の穴子の沢煮海苔舎利に胡瓜と玉葱のソースの2種の手巻き寿司と、そしてこだわりの日本酒またはお茶が添えられました。

手巻き寿司を握る木村康司氏

水仙の店

水仙の店では、天日干しのそばを契約農家より仕入れ、生粉打ち十割そばを提供している「流山すず季」鈴木宏富さんと、 そばの味や種類や粒の大きさに合わせてベストな状態に仕上げるために手動の石臼にこだわっている「らすとあだ」日比谷吉弘さんがコラボしたコース料理を提供。

料理のテーマは三瓶山。三瓶エリア周辺の食材で作られており、前菜から三瓶の山をテーマにした食、例えば三瓶在来種で蕎麦を打っているそう。
暖かいおそばには幻のキノコと呼ばれるヒラタケ、三瓶蕎麦の人気店「三瓶温泉 そばカフェ 湯元」のつゆを使用しています。


明治2年創業の旭日酒造・寺田栄里子さんがつくる地酒・十旭日(じゅうじあさひ)を呑みに来たお客さんも多かった。

熊谷家

イベント初日の朝から列をなしていた熊谷家で味わえるのは、「とんかつ成蔵」(三谷成藏さん)のシャ豚ブリアンかつとアキンボ謹製のお供の野菜セット、「カレーのアキンボ」(川岸真人さん)から佐賀県白石産牛キーマカレーと鳥取県産米プリセンスかおり、「ワイナリー奥出雲葡萄園」(安部紀夫さん)から旅するひと皿限定の小公子3種飲み比べセット。
国の重要文化財でもある熊谷家の広い台所で料理が振る舞われ、奥に進むと広い庭が広がる贅沢な空間は人々で賑わっていました。

豚肉の魅力を引き出す「とんかつ成蔵」三谷成藏さん

旧イタリア料理店

生ハムの「BON DABON」多田昌豊さん、松江の行列ができる魚介豚骨の人気ラーメン店「天空」原奨平さん、埼玉のクラフトビール「コエドブルワリー」朝霧重治さんが出店した旧イタリア料理店では、24ヶ月熟成させた生ハムと1日300食限定のラーメンを注文。
魚介の風味が効いたスープがおいしい! 2階席では子連れの家族がラーメンをすすり、隣にはカップルと思われる若者が生ハムを満面の笑みで食べていました。


美しい町並みを食べ歩く。

石見銀山は“銀鉱山”と想像するかもしれませんが、日本の古きよき町の重要伝統的建造物群保存地区を住民たちが維持しているのも大きな魅力の1つ。古い民家が軒を連ねる町並みを歩くのもこのイベントの醍醐味です。

食べたら歩き、歩き疲れたら縁側で休憩している人もちらほら
大通りを歩けば統一感のある景観や里山に溶け込む人々の営みを感じられます。

ヒダカキッチン

ヒダカキッチンでは、「“流し”イタリアンシェフ」の岸本恵理子さんによる手打ちショートパスタ、店舗前の通りで「チーズ工房千」柴田千代さんによるできたてモッツァレッラチーズ、「THE WINE STORE」横川かおりさんによるワインが提供されました。
筆者は「チーズ工房千」のモッツァレッラチーズを注文。

チーズをほぐす店主・柴田さんの手捌きも、チーズの驚くほど柔らかい自然な味わいもお見事!
「うまい!」「おいしい!」という歓声が聞こえてきました。


作家のてしごとに触れる。

『木と土calmの特別展』

作家のてしごとに触れられることも旅するひと皿の魅力です。
山口県下関市の築150年の古民家で木工と陶芸のギャラリー「木と土calm」を営む坂本祐樹さん・木本紗綾香さんは、旅するひと皿限定の器も販売。

木工家具の曲線が美しく、陶器は深い茶色や緑色といった深いアースカラーが特徴

『島根の作家・3人展』

なかむらホールでも、旅するひと皿限定の器が展示・販売されました。

垣内信哉 (ガラス)
岩佐昌昭 (陶器)
山田哲也 (木工)

とりわけ印象に残ったのは、木工作家・山田哲也さんがつくるひと皿。
ひと皿にかかる陰影は手彫りがうむ自然な凹凸にあるようです。こんな器を使えば日常が美しくなってゆくだろう……と、楽しい妄想がふくらみます。
旅するひと皿が開催するときには、食を彩る「器」を探しに来るのもおすすめです。

穏やかな時間を過ごす 

KATOUKE STUDIO

KATOUKE STUDIOではワインショップ「FUJIMARU」木邨有希さんと「VIA THE BIO」綿引喜広さんがコラボした地元野菜のとろーりチーズフォンデュソース、和田雄太郎さんが石見銀山に店を構える日本酒とナチュラルワインの酒屋「リカーショップアンボア」でナチュラルワインを注文。

KATOUKE STUDIOの玄関から土間を抜けた先には庭が広がっており、目の前に現れたのはスタンディング式のバーカウンター。

白いシャツを着た男性が静かにワインとチーズを嗜んでいる様子。
右側のテーブル席では女性たちがワインを飲みながら談笑しており、はしゃぐ声のほうを見ると、テーブルの周りや木陰にかけられたハンモックの間を子どもたちが走り回っています。

通りから家(お店)に入ると雰囲気は一転。
穏やかな時間が流れるのは石見銀山の町ならではの時間です。

町民と話す時間も楽しい

宗岡家

大森代官所の地役人として勤めた武士の屋敷として重要な役割を担った宗岡家では「デルベア」熊倉真次さんが作るバウムクーヘン、「cafe ma-no」北信也さんが淹れるドリンクとバターサンドが振る舞われました。

会期である2日間にわたって宗岡家に訪ねましたが、イベントの終了時刻まで人が並ぶほどの盛況ぶり。
列の前に並ぶお客様は「妻にお土産を」と、コーヒーとバターサンドをテイクアウト。

筆者は丹波栗とバウムティラミスパフェを注文。
武家屋敷の畳の間から庭先を眺めながら食べるパフェは、その自然な甘味で顔がほころんでしまうほど格別な味わいでした。

お土産もいっぱい

ベッカライコンディトライヒダカ

石見銀山のある大森町で唯一のドイツパンとお菓子の店「ベッカライコンディトライヒダカ」。
ドイツで働きながら製パンと製菓を学び、国家試験を受け、マイスターの資格を取得した日高 晃作さんと日高直子さんが通称:ヒダカパンを営んでいます。
ドイツパンや焼き菓子は、食べ歩きはもちろん、帰り道でお腹が空いたときにもピッタリのお土産ですよ。

平日もお客さんで賑わうヒダカパンだが、イベントの2日間は列が途切れなかった

「地域に根付いた取組みをする気運につなげたい」トレンダーズ・黒川涼子

2日間にわたって存分に楽しませてもらったイベント。
イベントに協賛してくださった方々がいると伺い、今回はSNSを活用して企業のプロモーション支援を行っているトレンダーズ株式会社の代表取締役社長の黒川涼子さんにお話を伺いました。
大田市に島根オフィスを構えるトレンダーズは、どのような理由で協賛したのでしょうか。

黒川さん:
「島根オフィスのメンバーと話をしていると、皆さん口を揃えて『大田市や島根県がより活性化するよう、何か貢献したい』と言います。
せっかくオフィスがあって仲間たちがいるのだから、大田市を盛り上げることが何かできないかと前々から思っていまして。」

今回島根オフィスのメンバーが旅するひと皿のインスタグラムの公式アカウントを運用。
島根オフィスのメンバーだからこそできたプロジェクトだったと振り返ります。

黒川さん:
「今回の取り組みは、地元のことに詳しい島根オフィスのメンバーだからこそできたプロジェクトです。地元の方々と連携しながら、イベントの告知だけでなく、石見銀山の魅力が伝わるように正しい情報を発信していく。島根オフィスのメンバーがとても積極的に取り組んでくれました。

弊社のような決して大きくない規模の会社でも、こんな形で地域活性化を支援する取り組みができるんだと、他の企業の方々に知ってもらえたら、“じゃあうちのやってみようかな”と思ってもらえるかもしれません。地方に拠点をもつ企業が、みんなでその地域を支援する活動をおこなえば、日本中が盛り上がる。そういう気運につながればなと思っています。」

Instagram – 旅するひと皿 公式アカウント

「地元の食材に光を当て、賑わいを取りもどしたい」
旅するひと皿 実行委員会 会長・日高 晃作

今回のイベントは実行委員会が立ち上げられ、会長として運営に携わったのは移住者であり人気のドイツパン屋を営む日高さん。
世界遺産の登録から時を経て徐々に観光客の数も減少していく最中にある町で当時のにぎわいを再現したかった、と日高さんは話します。

日高さん:
「2016年に開催した初めての旅するひと皿は、世界遺産に登録してまもない頃を思わせるくらいの賑わいがあったから、地元の人も料理を振る舞う人たちもすごく喜んでくれました。その賑わいを再現したいし、地元の食材にも光を当てたいと思って第二回目を開催させてもらいました」

町民の皆さんも楽しそう。縁側でおしゃべりしている様子
200年以上続く老舗、「げたのは」を作るお菓子処・有馬光栄堂

二日間にわたって開催されたイベントで町の中心地は多くの人々で賑わいました。

日高さん:
「まずは無事に終えられてホッとしました。2016年に開催した前回と違って今回は石見銀山みらいコンソーシアムという組織が地元の有志で立ち上がっていて、そのメンバーを中心に事務局ができて動けました。その中でも市役所や観光協会、島根県、群言堂さん、中村ブレイスさん、大森町の人たちも含めて応援いただき連携して一体感を持って、いろんな組織が関わってくれてできたことだと実感してます。普段は別々で動く組織が枠を超えて一つのことをしようと人が動いて関わってくれたのは新しい動きだったと思います」

しかしながら日高さんは、今回のイベントを通して得た課題こそこれからの糧になる経験値だと言います。

日高さん:
「料理人さんにとっては料理は作りすぎてもいけないし、かといって数が少なすぎてもいけない。お客さんにとってもあまりにもたくさんお客さんが集まりすぎて、お店で料理を食べられなかったり待ち時間が長すぎたりしてもいけない。もしまたやるなら来場者と出店者のお互いが安心してイベントを楽しめる予約システムのようなものを作りたいですね。
それでも、町を歩く人たちがみんないい顔だったんですよ。道ゆく人たちが食を楽しんで町並みを歩いているのはすごくいい光景だなぁと思って。石見銀山がもつ受け皿を、今回のようにいい形で維持して発展させていきたいですね」

終わりに

石見銀山・大森町の住民たちが大切にしていることを記した大森町住民憲章に書かれているのはおだやかさと賑わいを両立すること。今回ひとりの参加者として、通りでは賑わいを、お店の中では穏やかさを味わえたように感じています。

正直なところ、心が和む週末を過ごすことができました。

石見銀山で味わう食、歴史、人。流れる時間。
賑やかなハレの日も、穏やかなケの日常にも、各々にその良さがあります。

賑わいと穏やかさが巡る石見銀山・大森町に、ぜひ訪ねてみてください。

SOUND
川の音 川の音

大森町の真ん中を流れる銀山川。
町のどこにいても川や水路の音が
ここちよく聞こえてきます。